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最高裁判所第一小法廷 昭和29年(オ)492号 判決 1954年12月16日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

論旨第一点について。

本件記録によれば、上告人は、原審において、単に上告人の前主たる長島広吉が訴外平岩良平から代物弁済として本件家屋の所有権を取得したというに止まり、その所有権の取得が、右家屋につき被上告人の前主たる平岩寿江のための所有権保存登記前になされたものである旨を主張したことは、これを認めることができない。従つて、原審が上告人の論旨につき判断をしていないからといつて、原判決の結論には影響なく、所論は採用することができない。

同第四点について。

所論は、本件所有権確認の訴は、その所有権に基づく物上請求権により給付の訴が許される場合であるから不適法であるというのであるが、物上請求の給付の訴をなすことを得る場合においても、その基本たる権利関係につき即時確定の利益があると認められる限り、これが存否確認の訴を提起することは何ら不適法ではない(大審院明治三二年一一月一一日連合民事部判決、民録五輯一〇号四頁、大正一三年五月三一日判決、民集三巻二六〇頁参照)。それ故所論は採用できない。

その他の論旨は、原審における証拠の取捨及び事実認定を非難するに帰し、すべて「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず、又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

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